オリンピック開催を見込み、日本は観光大国を目指した産業見学や体験などを盛り込んだ振興策を繰り広げてきた。コロナウィスル第3波の拡大により、「Go To キャンペーン」中止の声が大きくなり始めた時期ではあったが、富山県は東京・日本橋とやま館で「富山の魅力デー」をメディア限定で、昨年12月上旬に開催した。同県が試験運用する顔認証システムによる決済方法の紹介のほか、日本料理店料理長による氷見寒ブリの解体・試食、オンライン観光と連動した和菓子イベントを実施した。同県観光施策は観光資源の活用、旅行者に与える満足度や魅力発信の繋がり性と継続性が特徴。何より官民のパートナーシップの良さが感じられる。以下で事例を紹介したい。
クラフト、体験も対象
昨年9月から実施するのは、5千円相当の特産品や体験メニューなどの特典を先着でプレゼントする「ウェルカム富山県キャンペーン」(https://www.gototoyama.com)。県内対象施設に宿泊したグループが、5千円相当の特産品や体験メニューなどの7コース(冬企画から)から選べる。クラフトコースでは能作や大寺幸八郎商店のすず製品のほか、本漆・金箔・螺鈿を施したグラスなどをラインアップ。体験コースでは全6社の物づくり体験を提供する。
同キャンペーンは、県民には富山の魅力の再発見を、また県外旅行者には再訪のフックとなることを目的とし、12月からは「冬」企画として継続、商品終了まで実施される。
オンライン観光
「旅する前に、出会える喜び。Online TOYAMA Travel」(https://www.online-toyama.jp)と題したオンライン観光事業も9月から展開、お得感と満足度の高い企画で、興味をかきたてる。
第1回「和菓子×伝統工芸」は、同県を代表する和菓子処の一つ「引網(ひきあみ)香月堂」の引網康博氏が登場。同店では陶芸家・釋永岳氏の菓子皿の付いたギフトセットなども販売する。参加者のリクエストで即興和菓子を創作したほか、高岡銅器とのコラボによるアルミ鋳造の菓子切りや富山の茶文化について語り合った。2回目はシロエビ漁の漁師と日本酒の杜氏。いずれも事前申し込みによる限定人数で、ZOOMを利用したオンライン・トラベル。申し込み者(先着または抽選、要3千円)に、1回目は和菓子がトラベル後に、2回目は事前にシロエビ刺身や日本酒が送られた。第3、第4として薬やウィスキーの企画を打ち出し、年度内計5回を予定する。また同観光は「ウェルカム富山県」の商品にもなっている。
能作「想い旅」
業界では高岡・能作が、昨年4月に地域限定旅行業を取得。第1弾として工場見学や鋳物箸置きの製作体験などができる「想い旅」(1泊3食付き、2人税込み22万円)を秋から販売した。
広報の能作千春氏は「ものづくり視点で、富山県内の点と点を結び、再発見と魅力を発信していきたいと旅行業を取得した。弊社が実施する結婚10年を祝う錫婚式は、県内外の利用者も多いことから、カップル向けの旅をまず企画。製作体験を通じて2人の絆を深めることをテーマにし、還暦の記念に、思い出に残る新婚旅行にと、コロナ禍での旅行需要の変化に伴い予想通りの反応を得ている。第2弾も現在計画している」と話した。
同社は2014年より産業観光事業を本格的に開始、19年には13万人を動員した。