「鈴木藏の志野 造化にしたがひて、四時を友とす」展が東京・港区の菊池寛実記念智美術館で3月21日まで開催されている。
重要無形文化財保持者の鈴木氏は、伝統的な薪窯での焼成にこだわる作家も多い中、1960年代当初よりガス窯を導入した。窯壁の厚さが1㍍ほどにもなる特殊な形状の窯は現在4台目。1度に約70点の作品を年4回ほど焼き上げる。ロクロやタタラで成形したボディに、赤松の割木を削って手作りされたヘラを用い、大胆な変形や細やかな削ぎを加えて形の強さを追究し、加飾においては鉄絵や象嵌(がん)、釉描の技法を盛り込むなど、茶碗における創作の試みは40年以上。86歳を迎える現在も変わることなく続けられている。
ロクロで成形した半筒形の器形にヘラで削ぎを入れ、歪みを加えることで、腰の張った力強い形に仕上げた「志野茶碗」(2019年)は、釉下に描かれた鉄絵による荒々しい抽象文様が効果をあげている作品。
松尾芭蕉の「笈(おい)の小文(こぶみ)」より言葉が取られた本展の副題は、現代に生きる作り手として創意を尽くしながらその先に生まれる不易のかたちを目指すという作家の姿勢を示している。新作の志野茶碗37点や花生、香炉、大型作品に一部旧作を加え、60点ほどの作品を展示。さまざまな志野のバリエーションを堪能することができる(会期中、一部作品の展示替えあり)。詳細は、公式サイトを参照。
菊池寛実記念 智美術館公式サイト