螺鈿(らでん)の魅力に焦点を当てた企画展「きらきらでん(螺鈿)」が、東京・港区の根津美術館で、2月14日まで開催されている。また同会期のテーマ展示では、新年らしい企画「点初め―新年の茶会―」も催されている。
きらきらでん
貝の輝く真珠層を文様の形に切り抜き、はめ込みや貼り付けによる装飾の技法、螺鈿(らでん)。「螺(ら)」は巻き貝、「鈿(でん)」は貝で装飾するという意味を持つ。貝を用いる工芸品は世界各地にあるが、アジア圏では漆工技法にも取り入れ、主に夜光貝や鮑貝が用いられている。色彩は単なる白ではなく、内から発光するかのような青から赤にかけてのグラデーションのきらめきが特徴。その貝と漆独特の美しい艶が織りなす世界は、古来より人々を魅了してきた。
「樹下人物螺鈿硯屏(じゅかじんぶつらでんけんびょう)」は、古代中国の三聖人と思われる人物が中央に表され、衣服の精細な模様の切り抜き、見る角度で色鮮やかに光る夜光貝など、中国の薄貝螺鈿の魅力が凝縮された作品。重要文化財の「桜螺鈿鞍(さくららでんくら)」は、華やかな日本の中世の螺鈿鞍のひとつで、鎌倉時代に極まった精妙細緻な貝の切り透かしが美しい輝きを放つ。黒漆地に厚めの夜光貝を用いて満開の山桜が表されており、武将の美意識を垣間見ることができる。そのほか、同館の所蔵品を中心に日本を軸として螺鈿の歴史と技術を紹介。長い歴史の中で育まれてきた螺鈿の魅力を堪能できる構成となっている。
点初め―新年の茶会―
「きらきらでん」と同会期中、同館の展示室6では、新年の最初に茶を点てる「点初め」をテーマに茶道具を展示している。展示作品は新年にふさわしい吉祥の茶道具約20件。その中の注目作品は高麗茶碗「御本立鶴茶碗(ごほんたちづるちゃわん)」。日本からの注文で釡山で作られたやきもの「御本」の代表作で、江戸幕府三代将 軍・徳川家光が下絵を描いたとされる逸品だ。
現在はコロナ対策により、入館は日時指定予約制となっている。詳細は、公式サイトを参照。