4回目となるデザイン&アートフェスティバル「DESIGNART TOKYO 2020」(主催・同実行委員会、10月23~11月3日)が開催された。
メーン会場の東京港区・ワールド北青山ビルでオープニングセレモニーが10月22日催され、また都内約70会場を舞台に、約150の出展者の作品を展示した。開会式では、代表の青木昭夫氏がコロナ禍での開催決断した経緯を説明。会場を疑似体験できたり、Facebook動画によるライブ発信など、昨年は22万人の来場だったが、今年はオンラインをこれまで以上に活用、100万人とつながれることなどをアピールした。
「NEW HOME OFFICE EXHIBITION働き方の新境地」展
ワールド北青山ビルでは、世界的コロナ禍で進むリモートワークに着目し、ホームオフィスをテーマに展開。新たなライフスタイルを提案する6つのブランドが、モンゴルの伝統的住居ゲルにインスピレーションを得た円形回遊型構成とした。「Vitra/SEMPRE」では角田陽太氏による「Common」のマグ(西海陶器)、キギ(上原亮輔氏/渡辺芳江氏)がデザインを手掛けた「KIKOF」(丸滋製陶)の八角形のマグなどが、またコペンハーゲン発の「ムート」では、U字型磁器花器「キンクベース」やガラス花器などがホームオフィスアクセサリーとしてならんだ。
薩摩切子「grad.」
東急プラザ銀座のマルマス銀座店では、「marumasu×Shizuka Tatsuno」展を開催。プロダクトデザイナー・辰野しずか氏が手掛けた薩摩切子の新ブランド「grad.」(薩摩びーどろ工芸㈱)とマルマスのテキスタイルがコラボした。同新ブランドは、次世代の伝統工芸に挑む若き匠をサポートする「LEXUS NEW TAKUMI PROJECT」から誕生したもの。辰野氏は「プロジェクトでの発表だけでなく商品化を意図していた。伝統工芸関係者との仕事は相性が非常に大切。同社は私の要求に対し真摯に、さらに高い技術で応えてくれた」と話す。「grad.」は、タンブラータイプ、被せた色ガラスでカラーグラデーションと、さらに大胆なカットでシンプルに表現した、通常の切子グラスの概念と大きく異なるだけでなく、グラスとしての髙い完成度がある。「酒器ではない、汎用性の高いグラスを目指した」と辰野氏。会場では染色工場を母体とするマルマスが「grad.」をモチーフにして染めたハンカチ、ストールなども販売、さらにブランド第2段の新作「grad. フラップ」2色も発表した。
「REBOOT」展
4月のミラノサローネ中止を受け、ジャスマック青山では、日本からイタリア、そして世界へ発信するための機会を創出すべく、合同展示会「REBOOT」が開かれ、8組人のアーティストが参加した。佐賀県「クリエイティブ・レジデンシー有田」の支援で有田町に滞在し、創作活動を行った伊デザイナーのデニス・グイドーネ氏は、李荘窯と開発したスケッチ、図面、原型、石こう型などと最終製品である食器セットと照明が、工程で見られる構成とした。
ミラノを拠点とするデザイナー・スガワラシュンヤ氏は、イタリアのコーヒー文化と山中塗を融合したエスプレッソカップ&ソーサー「FORMA」を発表。ビビッドな赤、青に黒と白の4色からなり、漆の仕上げの技法の違いで丸、三角、五角の形が浮かび上がる。このほか富山ガラス工房を中心としたガラス作家と多様な分野のアーティストらの「9+1+glass」では、ガラス表現の可能性を探る作品がならんだ。
その他の会場
今年1月南青山にオープンした中国発のメンズ・ファッションブランド「単農(ダンノン)」では、建築家・黒川雅之氏率いる「ひあ/HERE」がテーブルウエアや家具を発表。代官山 T―SITE(代官山 蔦屋書店)では、プロダクトデザイナー・鈴木啓太氏が近年手掛けた作品を展示し、4月に立ち上げた唐津焼や鍋島焼など8工房の職人たちと作る円形花器のプロジェクト「ONE FLOWERWARE」も展開した。
表参道ヒルズでは、「境界線に風穴をあける」(10月27日~11月3日)と題した展覧会で、岡山県津山・森永製陶所とnottuoが組み、皿鉢湯呑みとすべての食器に高台を付けた、工業製品とクラフト作品の中間となるプロダクト食器がならんだ。渋谷・ホテル コエ トーキョーでは、シーラカンス食堂が商品企画を行った、ガラスと同等の透明度を持つシリコーンゴム製のグラス「KINJO JAPAN E1」を披露した。(陶業時報12月1日号に掲載)