「英国で始まり 濱田・リーチ 二つの道」 益子陶芸美術館

濱田庄司 「鉄絵壺」1922年頃 益子陶芸美術館蔵

 「英国で始まり 濱田・リーチ 二つの道」が、栃木県の益子陶芸美術館で、11月8日まで開催されている。
 表題の「英国で始まり」は、濱田庄司(1894~1978)が、自身の半生を回顧した言葉「私の陶器の仕事は、京都で道を見つけ、英国で始まり、沖縄で学び、益子で育った」に由来する。
 1920年、濱田はバーナードリーチ(1887~1979)とともに、イギリスのセントアイヴスに東洋風の登り窯を築いた。今からちょうど100年前のことだ。そこからイギリスの近代陶芸の礎となったリーチ派の作家たちが生まれ、近現代イギリスの個人陶芸(スタジオ・ポタリー)の系譜へと、新たな陶芸の歴史が展開していく。イギリスの近代陶芸史の中で、大きな転換点となったのが、渡英3年後に開催された濱田の初個展だった。会場は純粋美術を扱うギャラリーであり、タイムズなど有力な新聞や雑誌にも取り上げられるなど、その作品は高く評価された。イギリスでは長い歴史の中で、器のような用を伴う工芸品の制作は、職人の仕事と意識付けられていたが、濱田の個展の成功は、そうした意識に変化をもたらしたようだ。同展では2人が英国で陶芸を始めたことで、いかに「陶芸家」という意識が育ち展開したかを、作品を通して見つめている。
 一方イギリスで始まった濱田の陶芸は、帰国後益子で本格的な作陶を始めると、周囲に大きな影響を及ぼしていく。最初期に濱田に師事した村田元、島岡達三、瀧田項一、阿部祐工、濱田晋作らをはじめ、同展では濱田以降の益子の近代陶芸の一端も紹介している。
 100年前に始まり、イギリスと益子、2つの地で切り開かれた陶芸の歴史を、60人の約170作品によってたどる展覧会だ。