辻晉堂の陶彫を紹介 愛知県陶磁美術館

 日本を代表する彫刻家、辻晉堂の生誕110年を記念し、その陶彫を大々的に紹介する展覧会が、瀬戸市の愛知県陶磁美術館で開催されている。「異才 辻晉堂の陶彫 『陶芸であらざる』の造形から」で、6月21日まで。
 同展では辻晉堂(つじしんどう、1910~81)が、京都を拠点に制作した陶彫作品を中心に、序章~5章の構成で、約80点を紹介している。
 序章では辻が抽象的な陶彫を生み出すきっかけを作った2人の人物が紹介される。その一人、曹洞宗の僧侶・岸澤惟安の「忘れるだけ忘れてしまって、そして残ったものを表せ」という教えは、生涯にわたって辻の造形思想を支えたという。
 1章では、1956年に初めて陶彫のみで開催した東京・丸善画廊での個展に、出品された作品をはじめ、初期の陶彫作品が展示されている。「犬」はこの時期の作品のひとつだ。直線で構成されたフォルムは、すぐには犬と分からないほど抽象化されている。
 2章では、1958年の第29回ヴェネツィア・ビエンナーレ展に、出品された大型の陶彫作品が披露されている。既存の概念にとらわれないその造形は、同展をはじめ海外でも高い評価を得た。
 同展ではさらに、3章「扁平な陶彫の出現」4章「登り窯から電気窯へ」5章「素描・版画」と、晩年までの作品を時代を追って紹介している。
 同時代の陶芸家に大きな影響を与え、やきものと彫刻の領域を横断する新たな表現の地平を切り開いた、辻の仕事をまとめて見ることのできる展覧会だ。

愛知県陶磁美術館