東京銀座のATELIER MUJI GINZA Gallery1で「考える。益子の新しい伝統に向けて」展が3月8日まで開催されている。
同展は「考える」をテーマに、イタリアデザインの巨匠エンツォ・マーリ氏が1970年代に手掛けた器「SAMOS」シリーズで行った、職人とデザイナーとの対等な対話からクオリティを生み出すという手仕事のあり方を示した方法に着想を得て、益子の阿部智也、大塚一弘、川島郁朗、濱田友緒の4陶芸家と同ギャラリーが構成するデザイナーらのチーム全11人が、2019年8月と10月の計6日間にわたりメッセ益子を舞台に繰り広げたワークショップを展覧するもの。
そのプロセスを語る約150点以上の試作やツール、さらに「SAMOS」の2点も披露される。①あり型で成形する②拾う③連ねる④巻く⑤なみなみ⑥ずらす⑦編む⑧平(なら)す⑨棒で構成する⑩切る――からなる。⑩では1枚のたたらに切り込みを入れ、貼るという低コストの成形の可能性を探っている。経験豊富な陶芸家たちをしても商品と呼ぶには程遠い試作の数々に見応えが十分だ。「今回の展示は、益子焼の新たな伝統に向けた長期プロジェクトのローンチであり、私たちは今後もワークショップを継続し、メソッドを進化させていく予定です」と語られる。
同展は2018年に発足した益子町と益子町の民間の作り手が共同でデザイン企画開発を行う制作グループ「MASHIKO Product」が協力。益子焼をはじめ町に根付いた手仕事を、デザインの視点から再解釈し新たな益子ブランドとして創出する試みを行っている。昨年は益子焼の新ブランド「BOTE&SUTTO」を深澤直人氏のデザインディレクションで開発した。
また同ギャラリースペースは、2019年4月にホテル併設の世界旗艦店として開業した「無印良品 銀座」6階に設けられた。マーリ氏との対話による「目先の経済を優先するのではなく、栗の木を植えるように長く持続し未来の人々に実りをもたらすこと」を目指した「栗の木プロジェクト」の第3弾として展開する。