日本初出店の「誠品生活」と注目の新店 「コレド室町テラス」

 三井不動産は9月27日、東京・日本橋で商業施設「コレド室町テラス」(以下テラス)を開業した。
 同施設は、「日本橋室町三井タワー」(3月竣工)の地下1階~地上2階に位置する商業施設で、1階に設置した大屋根の下に広場を設け、隣接する日本橋三井タワーと一体感を持たせている。アクセスは東京メトロ銀座線・半蔵門線「三越前」駅、JR横須賀線・総武快速線「新日本橋」駅に地下歩道で直結する。
 「テラス」のコンセプトは「価値ある時間を、過ごす場所」。店舗面積約6000平方メートルに日本初出店や新業態の店舗などを含む食やモノ、コトを提供する31店舗が入居する。メーンテナントとして2階に台湾発大型複合セレクトショップ「誠品生活」が出店するほか、1階には飲食と物販の21店、地下1階は飲食9店が出店する。三井不動産の日本橋再生計画は2010年のコレド室町1、14年コレド室町2・3開業と続いており、現在は全体で年間3000万人が来館している。同社は記者会見で「コレド室町テラスを加えたコレドシリーズ全体で売上250億円規模を目指す」と発表した。

誠品生活日本橋

 メーンテナントの「誠品生活」は、本国台湾を中心に、香港、蘇州、深センと店舗を拡大しており、現在は全世界で49店舗、コレド室町テラスの「誠品生活日本橋」は、日本1号店となる。「くらしと読書のカルチャー・ワンダーランド」をコンセプトとする約2800平方メートルのフロアは、誠品書店(書籍)、物販・ワークショップ、レストラン、文具の4ゾーンで構成し、「誠品生活」が日本・台湾を中心にセレクトした13ショップが入る。
 店内では、暖簾などで仕切られたショップに加え、台湾でも実施していたインキュベーションプロジェクト「誠品生活expo」を導入。このコーナーはロの字型の通路のL字部分の真ん中を仕切るように、台を設置し商品をディスプレーする。「選りすぐりの日本の伝統手工芸」をうたう「日本セレクト」では、廣田硝子の「昭和モダン珈琲」「リキッド」、上出瓷藝「クタニシール」、瀬戸・翠窯の多様な角皿などをラインアップ。「台湾セレクト」では人気アーティストのアキボ・リー氏テザインの皿や、若手クリエーターによるリサイクルボトルアートなどもならび、expoはシーズン毎の提案を行う。また「誠品生活松山店」で展開する、窯を備えた吹きガラスのワークショップ工房を日本橋でも再現。「日本橋玻璃工房」を設置し、(一社)東京ガラス工芸研究所が実技をサポートする。

 日台で日常的に使われている食材や調味料、食器やキッチン雑貨を集めた「誠品生活市集」がユニークで目を引く。入り口付近の冷蔵庫ではタピオカドリンクなどの台湾飲料を販売するなどコンビニ風。店内にはクッキングスタジオも併設するほか、台湾の調理家電「大同電鍋」や「豆腐よう」などの食品とともに日本のおひつや、陶磁器、木工食器類をディスプレー。台湾人バイヤーの新鮮なセンスが味わえる。日本製食器では砥部焼、多治見「スイーツクラフト」、すすむ茶屋店の茶器や、木村硝子店のグラス類、荒物問屋・松野屋の商品も数多くセレクトされている。

 13ショツプの一つが、「クリーマ&エッセンス」(35平方メートル)。ハンドメードプレイス「クリーマ」が、約40人の人気クリエーターの作品を入れ替わりで紹介する新業態のコンセプトストアで、こけら落としは益子焼つかもと、のぐちみか氏、イラストレーターで陶芸家のエイミーデパナ氏の食器類がならんだ。その隣では、日本全国のファクトリーブランドを集めたセレクトショップ「工場十貨店」が、品質・デザイン・価格で優れたブランドを厳選して編集した。また台湾で150年以上の歴史をもつ老舗茶荘「ワンダーチュアン」が日本初出店。茶葉、茶器の販売のほか、茶師による伝統的な茶芸の実演や、オリジナルドリンクを提供し、イートインとテイクアウトの両方に対応する。
 三井不動産と誠品生活は、日本における誠品生活事業のライセンスを保有する合弁会社を設立。「誠品生活日本橋」の運営は書店の有隣堂。有隣堂は18年3月に東京日比谷に開業した「東京ミッドタウン日比谷」で、新業態「ヒビヤ セントラル マーケット」を開店、今回再び三井不動産とタッグを組んだ。誠品生活は代官山 蔦屋書店のモデルとも言われており、書店だけでなくギャラリー、外食、ホテル業なども手掛け、米国CNNの「世界で最もクールな百貨店14」に選ばれるなど、海外で非常に高く評価されている。

食器業界からの出店

 1階は飲食店と物販店が混在する構成で、食器を扱う3ブランドが店舗を構えている。中央通りに面したファサード部に高岡・能作が、先月開業した大阪・大丸心斎橋店に続き直営店を出店。店舗面積約77平方メートルで、本社ファクトリーショップと同様にすず板が店内内装に施されている。能作克治社長は「路面店の立地を生かして、心斎橋店と同様にインバウンド需要をねらう、月商1000万円が目標。また450メートルほどの距離にある富山県アンテナショップ・日本橋富山館と連携し富山をアピールしたい」と述べ、連携企画「日本橋能作めぐり」を実施した。
 同じくファサード部には「日本百貨店 にほんばし総本店」(約235平方メートル)が登場。2011年東京・秋葉原と御徒町の高架下に「日本百貨店」を初出店、現在は食料品や飲食業態でも店舗展開するほか全国各地でポップアップも行っている。陶磁器関連品も多く、砥部焼、小鹿田焼、出製陶(備前)、江戸時代後期10年ほどで途絶え臼杵藩御用窯を現代に復刻した臼杵焼なども扱っている。鈴木正晴社長は「食品を含めて取り扱い品が非常に多く、客層を見ながら商品構成を考えていきたい」と語った。
 このほか、味噌などの発酵食品を扱う「85(ハチゴウ)」では1616/arita japan、めいぼく椀、ハリオのガラスアクセサリーのポップアップも開催されていた。

コレド室町周辺の日本橋再生計画

「グレーター日本橋」の再開発計画

 コレド室町シリーズの近隣には三越日本橋本店、野村不動産の「ユイト」、さらに中央通りを銀座方向に進むと昨年9月に開業した日本橋髙島屋S.C.(日本橋髙島屋三井ビルディング)などの商業施設へと続き、日本橋の商業エリアが一層広がった。これら一連の再開発は、三井不動産が04年から着手する「日本橋再生計画」の一環で、今回のコレド室町テラスの開業によりさらなるステージへと進む。
 次は旧日本橋区に相当する「グレーター日本橋」の再開発計画。旧日本橋区とは、住所に「日本橋」を冠する21の町に、八重洲1丁目を加えたエリアで、昭和通りを境にWESTエリアとEASTエリアに2分。EASTは隅田川沿いまで広がる。併せて首都高速道路の地下化を視野に、国の重要文化財である日本橋の周辺と日本橋川沿いを再開発する長期計画も打ち出している。
 日本橋川沿いに敷地面積約6万7000平方メートル、施設の延べ床面積約122万平方メートルにも及ぶ5つの地区の再開発を構想する。来年の東京オリンピック・パラリンピック後に開始される首都高速道路の地下化が実現すると、川幅含め幅約100メートル、長さ約120メートルの「親水空間」が創出される計画で、開発は2035~40年に終了予定となっている。