愛知県陶磁美術館、河井寬次郎展を開催

鉄辰砂草花図壺 河井寬次郎 昭和10(1935)年

 釉薬の扱いに長け、「色彩の河井」と評された河井寬次郎の全貌を紹介する特別企画展「京都国立近代美術館所蔵 川勝コレクション 鐘渓窯 陶工・河井寬次郎展」が、瀬戸市の愛知県陶磁美術館で、10月20日まで開催されている。
 京都国立近代美術館が所蔵する河井寬次郎作品のコレクション(川勝コレクション)は、河井の代表的な作品を網羅しており、その仕事の全貌を物語る「年代作品字引」とも呼ばれている。コレクションを形成した故・川勝堅一氏(1892~1979)は、髙島屋東京支店の宣伝部長、髙島屋の総支配人、横浜髙島屋専務取締役などを務めた人物。コレクションについては「河井・川勝2人の友情の結晶」と述べているということだ。
 同展では425点にも上る川勝コレクションの中から、初期から晩年に至る河井寬次郎作品のほか、交友関係のあった濱田庄司、バーナード・リーチ、富本憲吉の作品も交えてその創作活動を振り返っている。

白地草花絵扁壺 河井寬次郎 昭和14(1939)年

 見どころのひとつが、パリ万国博覧会グランプリ受賞の「鉄辰砂草花図壺」や、ミラノ・トリエンナーレ国際陶芸展グランプリ受賞の「白地草花絵扁壺」(前期のみ展示)。「鉄辰砂草花図壺」は、昭和12年のパリ万博に川勝氏が当人に内緒で出品し、グランプリを獲得した作家を代表する1点。「白地草花絵扁壺」も昭和14年に制作されたものだが、川勝氏が自身のコレクションの中から、本人に無断で昭和32年の国際陶芸展に出品し、グランプリを受賞した。2人の友情を思わせる逸話の残る作品だ。 
  9月28日午後1時半~3時には、講演会「河井と川勝―友情が生んだ珠玉のコレクション」を催す (聴講無料で事前申込不要)。講師は大長智広氏(京都国立近代美術館研究員)。