兵庫陶芸美術館、「恋する古伊万里―かたちとデザインの魅力―」を開催

「色絵石畳牡丹花唐草文変形皿」 1690~1730年代 佐賀県立九州陶磁文化館蔵(柴田夫妻コレクション)

 「恋する古伊万里―かたちとデザインの魅力―」が、兵庫県・立杭の兵庫陶芸美術館で、9月29日まで開催されている。
 柴田明彦・祐子夫妻により収集され、佐賀県立九州陶磁文化館に寄贈された1万点余の「柴田夫妻コレクション」と、同館所蔵の優品の中から、124件255点を紹介する展覧会。江戸時代の古伊万里の形やデザインに注目し、斬新な構図、かっ達な筆使い、新奇な絵柄など、多彩な意匠を通して「かわいい」や「おしゃれ」「粋」といった、現代の感覚にも通じる古伊万里の魅力に迫る構成だ。
 会場では古伊万里の歴史を振り返ったのち、まずは文様と構図に着目。器の中に咲き誇る花々や、愛らしく表現された動物、文字を意匠として取り入れたものなど、さまざまな文様を取り上げるほか、器の画面を分けて、異なる文様を組み合わせる片身替わりなどの構図が紹介される。
 ついで着目するのが形。古伊万里の中でも、花やチョウ、折り紙の形など、ものの形をかたどった変形皿は、形とそこに描かれた文様が組み合わさり、優れた意匠が多い。ここには色絵を中心に華やかでかわいい小皿がならぶ。向付や酒器、猪口などもある。角形のもの、椀状のもの、筒状のものなど、大きさもデザインも多種多様。現代人の目にもおしゃれに映る器たちだ。
 最後は町人文化が全盛期を迎えた19世紀。食文化の発展とともに外食産業が盛んになり、磁器は屋台や旅籠屋などでも使われ、庶民の暮らしにも浸透するようになる。ここではこうした食器が描かれた浮世絵とともに、染付の大皿が披露されている。別室には古伊万里による、現代生活にもマッチしたテーブルコーディネートも用意され、見応えのある展覧会だ。

「銹瑠璃青磁釉蓮鷺文輪花三足皿」 1640年代 佐賀県立九州陶磁文化館蔵(佐賀県重要文化財)