豊富なビジュアルと資料で一つのテーマを深掘りするムック「別冊太陽」(平凡社)からこのほど、「六古窯を訪ねる」が刊行された。監修は美術評論家で(公社)日本陶磁協会の常任理事を務める森孝一氏。A4変形判、168ページ、税別2600円。
現代の「美」と評されるものは人の心の移ろいとともにめまぐるしく変化しているが、六古窯はその対極的存在といえる。中世から現代に至るまで連綿と受け継がれてきたその歴史は、日本人が感じる普遍的な「美」を裏付けている。監修の森氏は、前書きで六古窯を「日本人が求める心の故郷」と表現。本書ではその6つの「心の故郷」を訪ね、「日本の美」を解き明かす。
壺や甕(かめ)の写真を大量に掲載し、それぞれの釉薬や文様の違い、景色や風合いの美しさを余すことなく紹介しているのが、本書の一番の特徴だ。各古窯の紹介ではQ&A形式で疑問点に答えているほか、作品の見どころもクローズアップし、写真を見ながら自然と「深掘り」できる構成が楽しい。「やきものと名文」のコーナーも必読で、各著名人の言葉はどれも味わい深く、やきものの見方や楽しみ方をそつなく教えてくれる。六古窯入門には必携の書。