「Craft×Tech Tohoku Project 2024 Exhibition」

会津本郷焼「Rain」と吉本氏(左)と弓川氏

 「Craft×Tech(クラフトテック)」の展示会「Craft×Tech Tohoku Project 2024 Exhibition」が5月24、25日、東京都千代田区の登録有形文化財「九段ハウス」で開催された。

 「Craft×Tech」は、日本各地の伝統工芸と、国際的に活躍するクリエーターによるアイディアや最新テクノロジーを融合させ、革新的なプロダクトやアートピースを生み出していくというもので、ロンドンと東京を拠点とするデザイン・スタジオ「Tangent」の設立者・吉本英樹氏が立ち上げたプロジェクト。同第1回はディレクターにマリア・クリスティーナ・ディデロ氏を迎え、津軽塗(青森)、川連漆器(秋田)、南部鉄器(岩手)、仙台箪笥(宮城)、置賜紬(おいたまつむぎ、山形)、会津本郷焼(福島)の東北6県6産地と、サビーヌ・マルセリス、Studio Swine(村上あずさ/アレキサンダー・グローヴス)、イニ・アーキボン、落合陽一、吉本英樹、マイケル・ヤング(敬称略)の6組とのコラボレーション作品が実現した。

 前日に実施されたプレス内覧には、クリエーターと産地工芸家が一堂に会し、作品および工程などを説明した。吉本氏は会津本郷焼窯元㈱流紋焼・弓田修司氏とタッグを組み、4枚の大型陶板を金属にはめ込んだフロアライト「Rain」を制作。「独特の釉薬による降り頻(しき)る雨を思わせるような情景が、金属とのハーモニーにより、堂々としたスカルプチャーの中に表現されている」と吉本氏。流紋焼は、明治33年(1900年)にがい子製作で創業。がい子で使用する釉薬を研究、戦後流れるような釉薬を開発し、現在はこれを花器や食器に用いる。弓田氏は「3Dの技術がなければ収縮する陶板を金属にはめ込むのは絶望的。当初は夜も寝られなかった」と話した。

 このほか、津軽塗は世界最古のシンセサイザーを内蔵した作品、川連漆器は漆の光沢を生かした丸みのあるテーブルと壁掛けを、南部鉄器は、モジュールを組み合わせた大小のテーブルを発表した。置賜紬と組み折り畳み可能な茶室を発表したメディアアーティストで筑波大学准教授の落合陽一氏は「この作品は10年前には作れなかった。20年ごろで、ようやくというレベルの技術」と話していたことが印象的だった。

 同プロジェクトは、「デザイン・マイアミ・イン・バーゼル」(スイス、6月11~16日)に出展、「Best Curio Presentation」を受賞した。さらに「ロンドン・デザイン・フェスティバル」(イギリス、9月14~22日)へと巡回する。

 吉本氏は東京大学で航空宇宙工学を学び、英国でデザイン工学を修めた。15年にスタジオを設立、20年東京大学先端科学技術研究センターの特任准教授に着任。今年のミラノサローネではレクサスのインスタレーションに携わった。

Tohoku Projectメンバー(Photo: Jun Sugawara)