タイル名称100周年 INAXライブミュージアム

 愛知県常滑市のINAXライブミュージアムで8月30日まで、タイル名称統一100周年を記念する巡回企画展「日本のタイル100年―美と用のあゆみ」が開かれている。藤森照信氏監修の下、同館および多治見市モザイクタイルミュージアム、江戸東京たてもの園(東京都小金井市)による3館共同企画で、会場ごとに展示構成が異なる。

 同展は3章構成。第1章「日本のタイルの源流をさぐる」で、当時隆盛した思想や文化、建築様式を背景に取り入れられた瓦やタイル、レンガ、テラコッタそれぞれについて名称統一に至るまでの歴史をたどり、第2章「1922年、タイルに名称を統一」では、大正期に入って文化と生活改善が言われ、西洋風な住宅が提唱されるにともないタイルの採用が進んだこと、および、スペイン風邪の流行(1918~21)による衛生観念の高まりから清掃が容易なタイルの需要が急増したことを解説している。取扱業者が増え、用途や使用部位に応じて呼び名も多くなり、流通を整理する必要から22年4月、25種類あった建物の壁や床を覆う薄板状のやきものの呼称を「タイル」に統一。ただ、名称統一は市場関係者にとって便利であるものの、利用者にはかえって用途や形の情報が不明となり、新たに分類基準を設ける必要が生じたことも説明している。そして、これを解決したのが日本標準規格JES(制定1929年)で、名称統一前は敷瓦に手仕事の美的価値を見出し茶室での炉台に転用したり、絵師が絵付けをしたりと工芸的な一面をもっていたが、JES制定により工業製品として用途や性能、形状や寸法を明確に示す必要が出てきたことを明かす。後藤泰男主任学芸員は、「手仕事の工芸品であったやきもの建材に、工業製品としての品質や性能を求めるようになったことが名称統一による大きな変化」だとしている。最後の第3章「日本のタイル100年」では、名称統一から100年間にわたるタイル使用の実例として、住空間や店舗・公共空間、都市空間を装飾的かつ実用的に飾る事例―清潔さの象徴として台所やトイレ・浴室に多用された白いタイル、銭湯を飾ったタイル、和製マジョリカタイル、調湿機能建材としての応用、タイル張りのたばこ屋、鉄骨造建築の表面仕上げテラコッタなど―を紹介している。

 より工業化が進み、もともとタイルの専売特許であった耐水機能を紙や布が持ちはじめると、タイルの使用量は減っていった。反対に、紙や布が得意とする領域にタイルが進出しているケースも。調湿機能をもつタイル「エコカラット」がそれで、土壁のごとく、多湿の時に水分を吸収し、乾燥時には水分を吐き出す仕組みだ。

 後藤学芸員は、工芸品の魅力を兼ね備え、人が関わって創造の領域で貢献できるタイルというものを見直してもよいのではと話している。

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