「昭和レトロモダン―洋食器とデザイン画―」が、瀬戸市の愛知県陶磁美術館で、3月21日まで開催されている。
昭和レトロモダン。近年その懐かしくも新しい世界が、注目を集めている。昭和と一口に言っても、戦前と戦後では時代の雰囲気や、暮らしのデザインは大きく異なっている。洋食器の分野では、明治以降長く日本陶器(現・ノリタケカンパニーリミテド)や名古屋製陶所が、先駆けとしての役割を担ってきたが、昭和初期になると中小規模の製陶所の本格的な事業参入が始まる。戦後には、愛知の三郷陶器や鳴海製陶、岐阜のヤマカ製陶所(のち大和陶器)などが、独自の技術やデザインを確立し、さまざまな洋食器を世に送り出した。
同展は、4部構成。「デザインの三郷」とも呼ばれた三郷陶器が手がけた洋食器とデザイン画を、戦後復興や高度経済成長などの時代背景とともに年代を追って紹介するほか、鳴海製陶とヤマカ製陶所の製品も含めた83件160点の作品により、戦後の洋食器をめぐる歴史と魅力に迫っている。
「三郷陶器のデザイン画が初公開されるだけでなく、意匠認証登録台帳など、貴重な資料もご覧いただけます」と同館。デザイン画や貴重な史料からは、時代の機運とその要請に応じたそれぞれの創意工夫を、垣間見ることができる。
写真は「デザインの三郷」を体現する「ONE WORLD」シリーズのうち「アーミッシュ・カントリー」。繊細な絵付けが魅力的なシリーズで、「バラライカ」「ヘルシンキ」「バスク」など、世界の国々の伝統的な意匠をもとに考案された8種類のパターンが作られている。
愛知県陶磁美術館