英国王室が愛した花々 東京都庭園美術館

 港区の東京都庭園美術館で「キューガーデン 英国王室が愛した花々 シャーロット王妃とボタニカルアート」が11月28日まで開催されている。

 ロンドン南西部にある英国王立植物園「キューガーデン」は、5万種以上の植物を栽培展示する世界最大級の植物園。ロンドンを代表する観光地の一つであるが、植物と菌類における研究機関としても知られ、2003年にはユネスコ世界遺産に指定されている。

フランツ・アンドレアス・バウアー ゴクラクチョウカ(ストレリチア・レギネ)(ゴクラクチョウカ科) 1818年 キュー王立植物園蔵 ⒸThe Board of Trustees of the Royal Botanic Gardens, Kew

 本展では同園が所蔵するボタニカルアートコレクションから約100点を展示。生き生きと咲き誇る花だけでなく、葉脈や産毛に至るまで写実的に描かれた植物画は、もともとは薬物誌や植物誌に掲載するために描かれたものだという。また、キューガーデンの発展に大きく貢献したシャーロット王妃が愛したウェッジウッド社のクイーンズ・ウェアも数多く展示されている。ウェッジウッド社の創業者ジョサイア・ウェッジウッドは、1762年にエナメル加工を施した乳白色の硬質陶器「クリーム・ウェア」を完成させた。このシンプルで上質なクリーム・ウェアに目を留めたシャーロット王妃が1765年「クイーンズ・ウェア(女王の陶器)」の称号を与え、ウェッジウッドを王室御用達とした。これを機にウェッジウッドは国外にも知られるようになり、海外の王侯貴族からの注文が相次いだという。本展で展示されているのは、蓋付き鉢やティーポットといった、華やかな食卓を想像させる食器類や、『種の起源』で知られるチャールズ・ダーウィンが所有していた「ダーウィン・サービス」など。館内入口付近に展示された、ジョサイアが古代ローマ時代のカメオ・ガラス「ポートランドの壺」を再現した作品にも注目してほしい。このほか、王室御用達の称号を得ているイギリス最古の磁器メーカー、ウースターがシャーロット王妃にちなんで手がけた磁器や、同園が発行するカーティス・ボタニカル・マガジンに掲載された植物画を施したダービー磁器などもならぶ。

ウェッジウッド 蓋付き深皿(クイーンズウェア) 1765-70年 個人蔵 (Photo: Michael Whiteway)

 本展を担当した学芸員が「花に囲まれていると幸せな気持ちになる」と言うように、気品ある旧朝香宮邸内をゆったりと歩きながら、咲き誇る花々を眺めながら過ごす時間は、束の間癒しを与えてくれるだろう。

東京都庭園美術館