瀬戸と美濃、洗練の美の競演 横山美術館

瀬戸焼「染付花唐草文大飾壺(一対)」加藤杢左衛門・明治時代

 横山美術館(名古屋市東区)で6月13日まで、「やきものの心(わざ)に挑んだ 瀬戸 美濃の美」が開かれている。ブルー・アンド・ホワイトの冴え冴えとした染付が特徴の瀬戸焼と、透光性を帯びた白い磁器の上で花鳥が華やぐ美濃焼。隣接産地として交流を続けながら、美の極まりにおいて認められる大いなる差異を確認することができる。
 両者は元々日常使いの器であったが、伝統製法の改良や釉薬の開発を進めた結果、美術工芸品へと質を高め、輸出陶磁器として名を馳せるように。瀬戸では、輸出陶磁器に先鞭をつけた川本桝吉をはじめ、大物づくりに長けた加藤紋右衛門、立体装飾を得意とする川本半助らが活躍。美濃においても、染付の細密画に才能を発揮した加藤五輔、絢爛豪華な薩摩焼風の作品に特徴がある成瀬誠志、釉下彩で知られる西浦焼の西浦圓治などが牽引した。
 瀬戸と美濃の美の異なりについて、本展では花瓶や茶壺、鉢、装飾壺、水注、皿、水差、ランプ台などおよそ100点にのぼる展示品をもって明らかにしている。見どころとなっているのは、瀬戸焼では加藤杢左衛門の「染付花唐草文大飾壺(一対)」と川本桝吉の「染付花鳥図大花瓶」、美濃焼では西浦圓治(五代)の「西浦焼釉下彩花図花瓶」と西浦圓治の「西浦焼上絵花鳥図花瓶」など。大きさの違いも明白で、瀬戸焼は大物、反対に美濃焼は小ぶりのものが多い。
 輸出先で異邦のコレクターたちを唸らせたこの国の先達の心(わざ)に迫る企画展。中澤麻衣学芸員は「陶磁器の技の極みに挑んだ明治・大正時代の陶磁師たちの心を感じ取っていただければ」と話している。
 会期中の第1・第3土曜日(各回午後1時30分~)、同館学芸員によるギャラリートークが開かれる。事前申込不要。

美濃焼「西浦焼上絵花鳥図花瓶」西浦圓治・明治時代中期