あけましておめでとうございます。昨年はコロナに始まりコロナに終わらない!?散々な年でしたが、今年は何とか明るい方向に向かって知恵と工夫と勇気で前進していきたいと願うばかりです。お正月はゆっくりと過ごされたでしょうか?私は生まれて初めて一人で過ごしました。ずぼらを決め込んでいましたが、いつもと違って妙に寂しくて調子がすっかり狂ってしまいました。
さて、今回のテーマは「大福茶」です。我が家で年が明けて最初にすることは、大福茶をいただくことです。今年初めてのお水で湯を沸かし、碗に梅干しと結び昆布を入れてお煎茶を注いだものなのですが、口に含むと梅干しの香りと酸味、なんとも言えない昆布の旨みが煎茶と合わさり、心も体も清められていくような気分になります。それからお屠蘇(とそ)をいただき新年のあいさつをして、お節料理をいただきますから、これがないと始まらないというわけです。
大福茶の由来は、平安時代にさかのぼります。疫病が流行した時に、京都六波羅蜜寺を開創した空也上人が観音様にお供えしたお茶を病人に飲ませたところ、病気が治る者が多く現れ、疫病が静まったといわれています。当時は、茶は薬として飲まれており上流階級しか飲むことのできない貴重品でした。時の天皇、村上天皇が毎年元日に服していたことから、「王服茶」(天皇が飲むお茶)と呼ばれるようになりました。それが「大服茶」に変わり、さらに「大福茶」と呼ばれるようになり、裕福な庶民にも伝わったと考えられています。現在でも、「朝茶は福を増す」「朝茶はその日の難逃れ」などの言葉の通り、朝のお茶は縁起が良いといわれています。
茶の効能を調べてみると、特に注目したいのはテアニンとカテキンです。テアニンは主に甘味や旨みを多く含み、リラックス、ストレスを和らげる効果があります。カテキンは覚醒作用で頭がすっきりするほか、抗酸化作用、抗ウイルス作用、殺菌作用があり、感染症予防や免疫力向上効果などと良いこと尽くめです。喉が乾燥しているとウイルスの付着が起きやすいので、喉を潤った状態を維持するために、殺菌効果のある緑茶をこまめに飲むことは理に適っているのです。
この「大福茶」は元旦だけではもったいないと思い、私の職場では1月中はお客様にお出しすると決めています。碗はお茶の色がきれいに見える白磁の煎茶碗、見込み(器の底)には「吾唯足知」をデザインした文字が。「われただたるをしる」と文字を読んで考え込む人、読まない人それぞれですが、京都竜安寺の手水鉢を模したものです。
大切なお客様用に使う蓋付汲み出しは、蓋を開けると内側には瓔珞紋(ようらくもん)が描かれています。瓔珞とはもともとインドの貴婦人が身につけた装身具で、仏教に取り入れられ仏像の胸の飾りやお寺や仏壇にも見られますが、おめでたい文様「吉祥紋」として中国からもたらされました。茶托を組み合わせると凛とします。こだわりは、使用する昆布は塩昆布です。より深い味わいになり美味しくなるのです。
またある時は、直径9.5センチ、高さ7.3センチの織部の大汲み出しに、大福茶という名のお抹茶を点てることもあります。お客様の姿勢がピンとなる一瞬です。テーブルでお出しするのにピッタリサイズで、大げさではないところが気に入っています。この頃になるとお正月気分もだんだんと薄らいできて、床の間や玄関を飾っていた花も少しずつ減っていきますが、最後の一本、千両は唐津焼の花入れに挿して食卓花として楽しみ、残念ながら落ちた赤い実は庭にまいて、運が良ければ来年芽が出るかな?というわけです。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
メニュー | 大福茶(煎茶・小梅・塩昆布)、抹茶 |
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器 | 染付見込吾唯足知紋煎茶碗 草山窯(有田焼) 黒塗桐蒔絵茶托 象彦(京都) 染付瓔珞紋蓋付汲出 たち吉(有田焼) 織部大汲み出し たち吉(美濃焼) 筒型南蛮焼き締め掛花入れ 中里大亀(唐津焼) |
花 | 千両 |
テーブルクロス | コボリ(宇都宮市) |