大丸心斎橋店がリニューアルオープン、注目の新業態店

 大阪の老舗百貨店「大丸心斎橋店 本館」(大阪市中央区)が9月20日、リニューアルオープンした。
 1717年に京都伏見で創業した大丸が、1726年に心斎橋に開業した呉服店が同店のルーツで、関西の百貨店では随一の歴史を誇る。百貨店再編によりJ.フロントリテイリンググループとなった後、同店は本館、北館、南館の3館を中心とする構成となっていたが、2016年からは本館が改装工事のため一時閉館。1933年に建てられた旧本館は、米国の建築家、ヴォーリズ氏によるアール・デコ様式の装飾が施されていることから、パーツの再利用や復元によって歴史的価値を持つ外観や内装が可能な限り保存される形での開業となった。

ヴォーリズ氏によるアール・デコ様式の装飾が施された美しい店内

 今回のリニューアルの主眼は「新百貨店モデル」の具現化。同グループは2017年から百貨店業態の改革を図る大型プロジェクトを進めており、今回のリニューアルは「GINZA SIX」「上野フロンティアタワー」に続くもの。定期賃貸借契約の活用で多数の新業態店や個性的な専門店を集め、新たな百貨店モデルを提示している。
 今回の改修により、売場を9千平方メートル増床して約4万平方メートルに拡大。地下2階、地上10階の構成で、地階および10階では食物販や飲食店、1~9階では物販やサービスなどを展開する。出店数は368店で、そのうち新業態が47店、関西初出店は41店となっている。大きな特徴の一つが、「インバウンドセンター」と位置づけて展開する9階だ。外国人観光客でごった返す心斎橋筋商店街沿いという立地を生かし、「ポケモンセンターオーサカDX&ポケモンカフェ」や「ジャンプショップ」といった日本のポップカルチャーを発信する店舗のほか、トラベルバッグ、コンビニ(ローソン)、外国人向けサービスカウンターなどを展開する。また地下2階では、スマホでメニューの閲覧、注文、決済が行えるという新システムを導入したフードホールを展開している。

 食器、雑貨関連分野でも、主に8階のライフスタイルフロアで注目の新業態店が多数出店している。

アイトーのライフスタイルショップ「綱具屋」

 陶磁器卸大手のアイトーは同社初のライフスタイル提案型ショップ「綱具屋 大丸心斎橋店」を出店した。約88平方㍍の売場で、全体の約半分を占める食器類を筆頭に、タオルやバスアイテムなどのライフスタイル雑貨、衣類やバッグなどのアパレル雑貨、食品、書籍、植物などと幅広い商材を扱う。全体のラインアップのテイストは「ナチュラル」「オーガニック」といったキーワードで表現されるところ。販売にも対応する什器は、インテリアブランド「クラッシュゲート」(関家具)から取り寄せたビンテージのような家具で統一し、ナチュラルな生活空間を演出している。

ナチュラルな生活空間を演出する綱具屋(アイトー)

 食器のラインアップは、このような演出に合うカジュアルな民芸調の人気筋を充実。種類別の棚割りのほか、鍋回り、酒器、茶器、コーヒーなどのテーマで編集した売り場を展開する。またクラフト系作家20人のラインアップをそろえたコーナーでは現在、オープン記念企画「お茶漬けのためのライスボウル展」を開催し、同企画向けに用意したオリジナル品などをアピールしている。作家コーナーの隣には瀬戸焼の箸置きが当たるガチャガチャも設置した。さらにメーンの売り場から独立した一角では、ノリタケ、大倉陶園、香蘭社、江戸切子、南部鉄瓶などの高級品をそろえた特選コーナーも展開している。
 同店店長の太田春香氏は同店について「食材を盛り付けるキッチンからリビングまでの生活雑貨を豊富にそろえる店。産地とユーザーをつないでいきたい」と語る。

「中川政七商店」と「茶論」初の一体型店舗

 中川政七商店が出店したのは、ショップブランド40店舗目となる「中川政七商店」に、茶道ブランド「茶論」を併設した初の一体型店舗だ。「茶論」は体系的にお茶を学べる茶道教室と茶道具販売を展開するショップで、同社の拠点の奈良店と東京の日本橋店に続く3店舗目となる。約94平方メートルの売り場を展開する「中川政七商店」では、台所道具をはじめとする工芸品1500点を展開。また、一体型店舗を意識して季節に合わせた「お茶としつらい」を提案するほか、大阪の地元で作られた商材もそろえている。約83平方メートルの「茶論」では茶人・木村宗慎氏監修の教室では従来型のコースに加え、外国人観光客が多い立地を意識して事前予約なしで参加可能な「茶の湯ワークショップ」を英語対応付きで新設。茶道具販売では、大丸のピーコックレリーフをイメージした同店限定の湯呑みを販売するほか、オープン記念企画として、大丸創業年にかけて「1717―茶論が選ぶ17の茶碗と17の帛紗(ふくさ)―」と題した展示販売を催している(10月10日まで)。茶論広報の源内礼氏は「一体型店舗により茶道への『敷居』が下がり、より多くの人に立ち寄っていただければ」と期待を込める。

中心部から右奥が「中川政七商店」、左手前とのれんの奥が「茶論」。左手前で「1717」の展示販売を行っている

フィスカース3ブランド集結した直営店

 フィスカースジャパンによる3ブランドを集結した初の直営店「ウェッジウッド|ロイヤルコペンハーゲン|イッタラ 大丸心斎橋店」を出店した。約100平方メートルの店内では、各ブランドごとに3つのセクションが展開されているが、それぞれを隔てる敷居がない。来店客はブランドをまたいで自由に商品を選ぶことができ、店側もそれぞれを組み合わせたMDができることが大きなポイントとなっている。実際にブランドをまたいだコーディネートのディスプレーも展開している。ストアマネジャーの石橋祥子氏は「今後は3ブランドをミックスした提案をしていきたい。セミナーなどのイベントも開催する予定」と語った。

「ウェッジウッド|ロイヤルコペンハーゲン|イッタラ 大丸心斎橋店」

「ぬりもん」、「マスターレシピ」、 「Needle to Leaf」 ほか

 漆器卸大手の祖父江ジャパンが初の専門店「ぬりもん」を出店。店名の通り、箸、椀、盆などの「塗り物」を中心に多彩な商材を展開するほか、粗挽きした椀を積んで乾燥させる「輪積み」という工程を店頭で披露したり、ユニークな輪島塗の地球儀を展示販売している。
 フランフランによる新業態店「マスターレシピ」は、京都祇園の路面店に続く2店目。世界中の工芸品を今の感性で暮らしに合う形にするというコンセプトで展開するショップで、世界20カ国から、国内は26地域から集めたという幅広い工芸品を展示販売する。保存された旧館の装飾デザインを手がけたヴオーリズ氏へのオマージュとして、壁面には「版築」、床面には「土間」を今の感性で表現したほか、丸テーブルや木フレームなど個性的な什器を使ったディスプレーで、モダンな空間を演出している。
 宇治茶生産・販売の大手、㈱福寿園による新業態店「Needle to Leaf」は今回の出店が3店目。手軽に入れられるお茶や茶器の展示販売を展開するショップで、来店客がお茶と茶器をコーディネート出来るスペースを設けているのが特徴だ。京焼や萬古焼などの茶器をオリジナル商品も含めて展開している。
  食器関連分野の出店では、カタログギフトの専門店「アンティナ」が、百貨店が展開するギフトサロンとコラボした新業態ショップ「アンティナ ギフトスタジオ」を3店目として出店するほか、デザイン性の高い高岡銅器を展開する「能作」、栗原はるみによる生活雑貨ショップ「シェア ウィズ クリハラハルミ」、キッチンウエアを中心とする生活雑貨を展開する「リアルキッチン」、衣類、リビング雑貨、和雑貨などを展開する「石見銀山 群言堂」、伊勢周辺の食材や萬古焼を含む工芸品を販売する「伊勢 ゑびや商店」などが出店している。また大阪では初、国内では3店目となる「MoMA Design Store」がファッション関連フロアの4階で出店し、国内外のブランドとのコラボ商品などを展開している。