雄勝ガラス、白山陶器などが受賞 2020年度グッドデザイン賞

    グッドデザイン・ベスト100を受賞したブルーファームの酒器「雄勝ガラス」

     (公財)日本デザイン振興会が主催するグッドデザイン賞の2020年度受賞結果が10月1日、発表された。
     今回は、デザインにおいて他者や社会、環境などについて考え、それに応えることを示す「交感」をテーマに開催。4769件の審査対象から1395件が受賞した。受賞対象の中から「グッドデザイン大賞」候補となるグッドデザイン・ベスト100も発表された。
     ベスト100を受賞した食器関連では、東北地方でブランディングなどを手掛けるブルーファームの酒器「雄勝ガラス」が受賞。「雄勝ガラス」は、石巻市雄勝町特産の雄勝硯(国指定伝統的工芸品)を生産する際に出る雄勝石が原料で、生産過程で産業廃棄物となる削り粉を溶かしてガラスにしたもの。人工的な着色はせず、雄勝石の成分を引き出すことで独特な黒みがかった鶯色(うぐいすいろ)が特徴である。審査員は「硯のなかに、人工的な着色ではない濡れたような深い鶯色が隠れていたことを思うと嬉しい気持ちになる。毛筆文化の衰退とともに、近年硯の需要は減少しているが、この美しい緑のガラスは雄勝の新しい顔になるかもしれない」とコメントした。このほかの関連受賞では、美濃焼産地である多治見市の多治見駅北広場の「虎渓用水広場」が、多治見市で一時使われなくなっていた豊富な水量の虎渓(こけい)用水を引き込み憩いの空間を演出しているなどと評価されて選ばれた。さらに、大手電機メーカーのシャープによるデジタル鑑賞システム「8Kインタラクティブミュージアム」が受賞。本来なら触れることができない歴史的な陶芸作品などを、手触りが同じレプリカと実物に迫る8K画質の映像を通じて圧倒的なリアリティで鑑賞できるシステムで、今後様々な分野に応用できる可能性が評価された。

     グッドデザイン賞には、白山陶器がアシンメトリーな造形のプレートと箸置きのシリーズ「ペトラ」、豊富なアイテム構成で手持ちの器と合わせやすい「S-line」、緩やかな曲線が見る角度によって変化する「CARVE」で受賞。審査員からは、収納時も含め、計算されたデザインと使用範囲の広さなどが評価された。食器関連ではこのほか、市原製陶とヨシタ工業デザイン室の再生土を20%配合した「トリップウェア」シリーズ、アウトドア製品などを展開するスノーピークによるアウトドアでも使うことを想定した土鍋と4枚の食器セット「土鍋膳」、会津若松市の企業、漆とロックの飯椀・汁椀・菜盛り椀の三つ組(入れ子式)仕様「めぐる」などが選出された。
     ロングライフデザイン賞では、ブランドの開発や育成を手掛けるドラフトのビニール製花器「D-BROS」が受賞。審査委員からは「斬新で素材とアイデアがうまく紡がれており、ストレートに製品化されている。さまざまな場所と場面で使われているデザインこそ、ロングライフデザインというに相応しい」と評価された。
     グッドデザイン賞を受賞した作品は例年、東京ミッドタウンで20万人以上を動員するイベント「GOOD DESIGN EXHIBITION」で披露されていたが、今年は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から中⽌に。その代替プロモーションとして11月30日まで、オンライン企画「GOOD DESIGN SHOW 2020」を開催しており、10月30日には特別賞の発表や大会選出の様子をYouTubeでライブ配信する。

    グッドデザイン賞公式サイト